アーユルヴェーダ 生命の科学

アーユルヴェーダの目的は幸福な人生

アーユルヴェーダの古典書は人間の取扱説明書

アーユルヴェーダは神様から聖仙を通して人間に伝えられたと言われています。それは有益で寿命を長くする神聖な知識(ヴェーダ)で、最上の幸福と長寿が与えられました。膨大なヴェーダの中で、ほんの一部分の医学に関する部分が独立したものがアーユルヴェーダです。「アーユス」とは生命を意味します。「ヴェーダ」が知識なので、「アーユルヴェーダ」は「生命の知識・科学」という意味になります。

AYUSH省

インド政府はインドで発祥した伝統的な医療システムを研究、教育、普及を促進するためにAYUSH省を近年設立しました。これらは以下の5つの頭字語です。

  • Ayurveda(アーユルヴェーダ):古代インドの医学体系で、ハーブ、食事、ライフスタイルの調整を通じて心身の健康を促進します。

  • Yoga(ヨガ):心と体の調和を図るための身体的、精神的、精神的な実践です。

  • Naturopathy(ナチュロパシー):自然療法とも呼ばれ、自然の力で治癒を促す療法です。

  • Unani(ユナニ):古代ギリシャの医学を起源とする伝統的な医療システムです。

  • Siddha(シッダ):主に南インドで実践されている、古代タミルを起源とする医学体系です。

  • Sowa-Rigpa: チベット医学としても知られる、伝統的な医療体系です。

これらのシステムは、病気の予防と治療において、ホリスティックなアプローチを重視しています。

健康を土台とした人生を充実させる視点

アーユルヴェーダは肉体に起こる病気や治療法に詳しいですが、その健康法は予防医学としても有効で、また内面を整えるための助言も伝えられています。例えば、アーユルヴェーダの古典書には、人間が幸福な人生を送るために必要なことが記されています。幸福を感じるには健康が土台となります。そのため、何が原因で病気を起こすか、その場合にどんな治療法があるか、有益な食べ物は何か、どんな薬剤が有効か、それは細かく伝えられています。

現代医学との違い

現代医学では痛みがあれば痛みをなくす治療をしますが、アーユルヴェーダでは痛みの原因を追求し取り除くアプローチをとります。そのため根本的な治療が可能になったり副作用が少ないという利点があります。病院に行っても原因が分からない不定愁訴や病気の場合、アーユルヴェーダの健康法で解決できることがあるかもしれません。

アーユルヴェーダの健康学

アーユルヴェーダは毎日行うと良い健康法(ディナチャリヤー)があります。例えば早寝早起き、舌磨き、油剤でのうがい、オイルマッサージ、入浴などです。また季節に沿った健康法(リトゥチャリヤー)もあります。例えば消化力の高い冬は重性の食品さえも消化できるようになる、雨季はヴァータを鎮静させるように暮らす、などの説明があります。おすすめの朝の過ごし方の一部はこちらのマガジンにまとめてあります。

感覚器官のケア

また感覚器官をケアすることも重要視しています。なぜなら感覚機能が狂うと内面の変調につながるからです。

正常な状態を保つために推奨されているのは「善行(サドブリッタ)」です。清潔さを保つことや、困っている人を助ける、慎み深くある、思いやりを持つなどがこれに当たります。肉体だけでなく内面の健康を保つための助言が数多くあります。

アーユルヴェーダの体質論

全ての物質は五大元素から成り立つと言われます。これは空元素(アーカーシャ)、風元素(ヴァーユ)、火元素(テージャス)、水元素(アプ)、地元素(プリティヴィー)です。この組み合わせによって《ヴァータ》・《ピッタ》・《カパ》という身体的なドーシャに分けています。これらは体内の代表的な動きを3種類の機能的エネルギーとも言えます。

全ての人間は生まれながらにしてこのドーシャの配分が違います。そこが個性となり個人の体質や気質を生むと考えます。また住む国や場所、食べ物がそれぞれ違えば、対応の仕方も変わってきます。そのため、西洋医学では原因不明と言われる場合でも、アーユルヴェーダでは個人の体質、食事、生活習慣など全てを勘案して適切な対処が可能になります。アーユルヴェーダの勧める食事に関してはこちらをご参照ください。

消化力

アーユルヴェーダでは食べる物と消化に重点を置き、その栄養が体組織を滋養しているかに着目します。そのためには食事が消化力に見合っているかが大切です。

消化力の強さ弱さなどは個人によって異なります。また摂取した食べ物や精神状態によっても影響を受けます。

このバランスが乱れて毒がたまったり病気という形が発生した場合、沈静させたり浄化する方法で流れを滞らせている原因を排泄させ、健康を取り戻すアプローチを取ります。

アーユルヴェーダの治療とは

アーユルヴェーダの治療では次の4本柱が必要だと言われています。それは「良い医者」「良い薬」「良い付添人」「良い患者」です。これが揃うと病気は治癒に向かうとされます。

ではどんな治療があるのか、アーユルヴェーダサロンやホームレメディとして使いやすい治療の一部をご紹介します。

ピンダスヴェダ ー 多種のやり方があり、一般的に冷え、痛み、緊張をほぐす
ピンダスヴェダ ー 多種のやり方があり、一般的に冷え、痛み、緊張をほぐす
カティバスティ - 腰痛や腰椎症の患者さんに対して腰に温かい薬用オイルを注ぐ
カティバスティ - 腰痛や腰椎症の患者さんに対して腰に温かい薬用オイルを注ぐ
パーダアビヤンガ
パーダアビヤンガ - 足裏は目の不調と関連していると言われる。ピッタの不調があるひとはギーを足裏に塗るのも効果的
シローダーラ
シローダーラ - オイル、ミルク、水、煎じ液などの液体をおでこに垂らすことで、深い精神的リラクゼーションをもたらす治療

アーユルヴェーダの薬草

アーユルヴェーダでは薬理作用によってハーブが分類されていて、症状によって内用もしくは外用で治療に利用されます。料理に使ったりお茶にしたり、薬草オイルとして、もしくはサプリメントとして摂取することもできます。

アーユルヴェーダの薬草アロエヴェラ
アロエヴェラ

ラサ:ティクタ、マデューラ

ラサーヤナでトリドーシャをバランスしスロータスを綺麗にする
アーユルヴェーダの薬草トゥルシー
トゥルシー

ラサ:カトゥ、ティクタ

ヴァータとカパをバランスするがピッタを増やす、心臓に良い作用
アーユルヴェーダの薬草アムラ
アムラ

ラサ:パンチャラサ

ラサーヤナでトリドーシャをバランスする
アーユルヴェーダの薬草アシュワガンダ
アシュワガンダ

ラサ:ティクタ、カシャーヤ、マデューラ

ラサーヤナでありヴァータとカパをバランスする
アーユルヴェーダの薬草ツボクサ
ツボクサ

ラサ:ティクタ、カシャーヤ、マデューラ

ラサーヤナで脳に良い作用がある
アーユルヴェーダの薬草ニーム
ニーム

ラサ:ティクタ、カシャーヤ

トリドーシャをバランスする

鎮静療法と浄化療法

アーユルヴェーダには鎮静療法(シャマナ)と浄化療法(ショーダナ)と言う大きく分けて2つの治療方法があります。

鎮静療法とは

乱れたドーシャを体外に排出させずに、身体の中でバランスをとり、症状を緩和することを目的とします。

  • 症状の緩和: 痛み、不眠、消化不良、疲労など、様々な不調や病気の症状を和らげます。
  • 心身のリラックス: マッサージなどを通して、心身の緊張を解き、リラックスを促します。
  • 免疫力の向上: 体内のバランスが整うことで、免疫力が高まると考えられています。
  • 若返り: 細胞レベルから滋養し、体の柔軟性を養い、老化を遅らせる効果も期待できます。

鎮静療法の方法

  • 食生活の改善: 体質や症状に合わせた食事を摂ることで、消化力の向上や食欲増進を図ります。
  • 生活習慣の改善: 適切な睡眠、運動、日光浴などを取り入れることで、心身の調和を促します。
  • 薬草療法: ハーブやスパイスの力を借りて、症状を緩和します。
  • マッサージ(アビヤンガなど): 薬用オイルを使用し、全身または部分的にマッサージすることで、血行促進、毒素排出、心身のリラックスを促します。

浄化療法とは

乱れたドーシャを強制的に身体から取り出す治療で、浣腸法や瀉血法などをすることです(パンチャカルマ)。鎮静療法よりも根本的な改善を目指します。

  • ドーシャバランスの正常化: 蓄積した過剰なドーシャを体外へ排出し、本来のバランスを取り戻します。
  • 心身の活性化: エネルギーの流れがスムーズになり、心身が軽やかになります。
  • 免疫力の向上: 体内環境が整うことで、病気に対する抵抗力が高まります。
  • 若返り(ラサーヤナ)効果: 細胞レベルからの活性化を促し、老化を遅らせると考えられています。

浄化療法の中心となるのが、パンチャカルマと呼ばれる5つの主要な治療法です。

  1. 催吐療法(ヴァマナ): 薬草を用いて意図的に嘔吐を促し、主にカパの過剰を取り除きます。
  2. 瀉下療法(ヴィレーチャナ): 下剤を用いて排便を促し、主にピッタの過剰を排出します。
  3. 浣腸療法(バスティ): 薬用オイルやハーブの煎じ液を肛門から注入し、主にヴァータのバランスを整えます。様々な種類のバスティがあります。
  4. 鼻腔療法(ナスヤ): 薬用オイルや粉末などを鼻から投与し、鎖骨上部症状を改善します。
  5. 瀉血療法(ラクタモクシャ): 汚れた血液を体外へ排出することで、ピッタに関連する症状を緩和します。現代では、ヒルを用いたり、注射器で少量の血液を抜いたりする方法があります。
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注:浄化療法は、体力を消耗する可能性もあるため、必ずアーユルヴェーダの専門家の指導のもとで行う必要があります。事前の症状の把握や準備、施術後の養生も非常に重要です。自己判断で行うことは避けましょう。

インドでパンチャンカルマを体験してみたい方は増えています。しかし、時間とお金がかかりますので、実際いかれた方の体験談などを参考にして計画してください。NPO法人ヴェーダビージャムでサポートもしておりますので、興味のある方はウェブサイトをご覧ください。

アーユルヴェーダは予防医学としても優れているので、普段から消化力と生活習慣を整えることで、病気を予防することができます。悪化させないためには日頃から鎮静療法を取り入れたり食生活を改善することが有効です。

アーユルヴェーダを生活に取り入れる

食生活を改善したい、お困りの症状があるなどでアーユルヴェーダを試してみたい場合、こんな方法があります。

  1. 自分で書籍などを読んで試してみる
  2. 近くのアーユルヴェーダサロンに行って体験してみる
  3. アーユルヴェーダ医師にアドバイスを求める
1は始めやすいという利点はありますが、取り入れ方が間違っていたり、やり方が分からないこともあると思います。その場合はワークショップを受けたり、講座を受講してみる、スクールに通う、などを試してみてください。何より実践してみることが大切です。
 

2のアーユルヴェーダサロンでは一般的に全身のオイルマッサージが体験できます。セラピストさんによってはカウンセリングを行なって、簡単な体質判断やお困りの症状の原因を教えてくれると思います。セラピストさんはクライアントの症状改善のためにトリートメントメニューを決めオイルを選択します。その為、常に知識をアップデートして切磋琢磨しているセラピストさんであれば、1番身近な相談者として頼もしい存在です。お近くのサロンを探したい場合はAyurvedaEverydayというサイトで検索できます。

3のアーユルヴェーダ医師というのは、インドでBAMSというアーユルヴェーダ医師としての資格を取得されています。体質判断や合うサプリメントなどが相談できると思います。実のところ、日本は外国人でBAMSを取得している人数が1番多いです。日本人のアーユルヴェーダ医師であれば言葉と文化の壁がなく相談できるのが1番のメリットです。

もしくはインド人医師が来日して脈診などで健康相談プログラムを行なっている時に診てもらうのも良いでしょう。代替医療としてアーユルヴェーダの治療を受ける、もしくはパンチャカルマが必要な場合などは、インドに行くことが一般的ですので、そうした相談もできます。

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